老眼年齢になってからの眼鏡合わせ

調節力3D以下、近点33cmが「老眼」の自覚の始まり

 

 
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「調節力3D、近点33cm」とは、45歳の調節力と近点距離の事です。(水晶体は凸レンズなので3Dは、+3.0Dとなります。+3.0Dの焦点距離は、100÷3.0D=33.33cm 小数点以下切り捨て 33cm)これが「近距離視力(老眼)検査」の基準距離となります。40歳の人は25cmまで文字を近づけても読めますが、45歳では33cmまでです。33cmより近づけるとぼやけてしまうのです。

正視眼の人は裸眼のままで。屈折異常が有る人は屈折異常の矯正をします。網膜上にピントを合わせて視力が1.0~1.2以上出るようにし、正視眼と同じ状態にしてから近距離視力(老眼)の検査へと進みます。老眼鏡を作る時も、最初は遠方視力から測定するのです。その理由は、屈折異常が無い人と屈折異常が有る人の眼の中のピントを同条件にする為です。この検眼が狂うと自ずと近用矯正度数も狂ってきますので、遠方視力矯正というのはとても重要なのです。

近距離視力(老眼)検査とは、33cmの距離で不足している調節力を調べる検査です。(※33cmから遠ざかった近点を再び33cmの所に戻すのに〇〇ディオプトリー(D)必要かという検査です。)
調節力が3Dに落ちている眼では、近点が33cmなので33cmから手前の距離が見にくくなります。逆に33cmよりも遠ざけると見やすくなります。調節力が1.5Dや1.0Dの眼では、近点が67cm、100cmとなってしまう為、33cmに戻すには若い頃よりも強い度数が必要なのです。

 
【40代後半女性 老眼初期の検査例】老眼鏡の決め方
 
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このように、老眼検査用の視力表を用いて行います。
 
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老眼鏡の仕組み

 

 
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老眼の年齢になると水晶体の柔軟性が加齢によって失われて行き、網膜上にピントを合わせる作業である「調節」がきちんと出来なくなってくる為、調節する力の不足分を年齢に応じた凸(プラス)度数で補う必要があります。この度数の事を老眼鏡と言います。また、遠用眼鏡装用者の場合は装用している遠用度数に調節力の不足分を加える形となり、一つにまとまったものが老眼鏡となります。
(画像Ⅰ)のように、水晶体のピント調節不足に相当した凸(プラス)度数だけを装用すれば手元の文字が見えるようになるのは、遠くが裸眼で良く見える正視眼の人です。
(画像Ⅱ)の場合は、日常から近視や遠視等の眼鏡をかけている人。眼鏡装用者は遠方度数と水晶体のピント調節不足に相当した凸(プラス)度数とを合算しなければ手元の文字が見えるようになりません。
■水晶体のピント調節不足に相当した凸(プラス)度数を別名『加入度数』と言います。遠方視力を矯正した度数だけでは老眼の役目は果たせない為、これに各年齢別の『加入度数』を加えて出来たものが老眼(近用)度数となり、小さな文字が読めるようになるのです。この『加入度数』は加齢で失われる水晶体の調節力なので、年齢によって違います。


「老眼」は45歳以上の全ての人が対象

 

「老眼」は45歳以上の全ての人が対象になります。その中で、「私は早いうちから老眼になった・・」「この歳で未だに老眼鏡がいらない・・」など、人によって老眼の自覚には違いが出ます。その理由は、『遠方矯正度数』が人それぞれに違うからです。【遠方の矯正度数は不要=正視眼】【遠視がある眼】【近視がある眼】このように個々に違った眼をしていれば老眼鏡が必要になる時期にも差が生じると言う事です。以下のように人によって屈折異常が違えば老眼鏡の使い方も違うのです。
①【正視】 遠用眼鏡は使用しない。一般に老眼と言われる年齢通りに近くが見づらくなり、その度数は既製品でも合う簡素な度数で済む。
 
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正視眼は遠くを見る時の焦点が網膜上に合っていて、遠方視力がとても良好な眼です。しかし、近くを見た時は網膜の後ろへ焦点が移ってしまいます。老眼年齢に達する前は水晶体を厚くして屈折力を増加させる「調節」を行い、網膜上に焦点を合わせて近くも見る事が可能でしたが、加齢により「調節」が困難になると、網膜の後ろにある焦点はそのままです。

※加齢によって水晶体を厚くする力(調節力)が失われた分に相当する凸レンズ(加入度数)を装用すれば、再び焦点は網膜上に合うので近くが良く見えるようになります。年齢に見合った加入度数と同じ、+1.50や+2.50といった既製老眼で良く見えるのです。これが正視眼の老眼です。

 
 
②【遠視】 二分類あります。「1.遠視眼の老眼は年齢以上の度数になる」「2.老眼になる年齢よりも早くから手元の文字が見づらい人もいる」
 
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「1.遠視眼の老眼は年齢以上の度数になる」とは、(上記画像)

遠用眼鏡が必要な遠視の眼は、いつも眼鏡をかけていれば網膜上に焦点が合っており、安定した遠方視力を保てます。近くを見た時も、今までは網膜の後ろへ移った焦点を水晶体が厚くなる事で屈折力を増し、焦点を網膜上に合わせる事が出来ていましたが、老眼年齢になると、加齢による水晶体硬化で網膜の後ろにある焦点を網膜上に合わせる事が困難になります。

※遠くを見る度数だけでは近くが見えない為、加齢によって水晶体を厚くする力(調節力)が失われた分に相当する凸レンズを装用すれば光を強く屈折させる事が出来て焦点を網膜上に合わせる事が出来ます。遠視の眼を矯正するのはプラス(凸)度数で、加入度数もプラス(凸)度数なので、プラス(凸)度数同士を合算する為に強い度数の老眼鏡になるのです。

 
 
 
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「2.老眼になる年齢よりも早くから手元の文字が見づらい人もいる」とは、(上記画像Ⅰ、Ⅱ)

例として年齢が40歳の人で、+1.00Dの遠視があるとします。この+1.00Dの遠用眼鏡をかけている場合と、かけていない場合では老眼鏡を使う時期に差が生じます。

眼は、手元の小さな文字等に満遍なくピントを合わせる為には「4D」という水晶体の調節力を必要とします。水晶体自体が凸レンズなので、この4Dとは「+4.00D」を意味します。+1.00Dという焦点が網膜の後ろにある遠視眼でも、老眼の年齢以前ならば水晶体を膨張させる事で網膜上にピントを固定出来ますから、遠くが見にくいという自覚がない人もいます。しかし手元の小さな文字は、まだ老眼の年齢ではない段階で見づらさを自覚する事があります。

(画像Ⅰ)屈折異常である+1.00Dの遠視を矯正する遠用眼鏡を使用していれば、近くを見た時に水晶体の調節力4Dをそのまま使う事が出来ますから手元の文字が見にくいとは感じません。45歳の老眼年齢になるまで老眼鏡の使用を先延ばしに出来ます。

(画像Ⅱ)屈折異常である+1.00Dの遠視を矯正していない場合です。40歳の水晶体調節力「+4.00D」から+1.00Dを焦点が網膜よりも後ろにある遠視を打ち消す為に使用します。そうすると残りの調節力は45歳と同じ「3D」となってしまい、手元の小さな文字がぼやけてしまうのです。その為、+1.00Dの老眼鏡を使って合計+4.00Dで近くを見るようにしなければならないのです。これが40歳なのに老眼鏡が必要になる理由です。

 
 
③【近視】「近視は老眼にならない」という話しもありますが、加齢で水晶体が厚くならず、近くの文字にピントが合わなくなる事が老眼なので基本的に誰にでも訪れる症状です。ただし、近視性(近視・近視性乱視)の眼は網膜よりも手前に焦点があって、遠くは見えずとも近くにはピントが合う構造になっています。
近視以外の眼が近い所を見る時は、網膜の後ろ側にずれてしまう焦点を水晶体膨張(調節)で屈折を強めて網膜上に焦点を引っ張って来る事でピントが合いますが、近視の眼が持つディオプトリー(D)が上手く作用して、裸眼で近方を明視出来るという特質があります。
 
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近くを見る時の【正視や遠視と違う近視の構造】(上記画像)

裸眼で遠くを見た時に、眼に入る光線が網膜上・網膜の後ろで焦点を結ぶ正視と遠視は、近くを見ると網膜の後ろで焦点が結ばれます。この焦点をを網膜上に合わせる為には水晶体を厚くして光の屈折を強くする「調節」が必要になるという年齢を問わない同じ共通の条件があり、加齢の為に水晶体を厚く出来なくなったら凸レンズを利用して光(焦点)を後ろから前に持ってくる老眼鏡を使用します。

近視は遠くを見た時に、眼に入る光が網膜よりも手前で焦点を結ぶので遠方視力が悪く、眼鏡レンズによって網膜上に光を届かせて必要な視力を得ます。近くを見る時は、眼鏡をかけなくても一定の距離までなら裸眼で見る事が可能。ただし、これには個人差があって『100cm÷矯正度数(ディオプトリー)=〇〇cm 』という方法で裸眼で見える距離を知る事が出来ます。
例えば矯正度数が-5.00Dの眼なら、100cm÷5.0D=20cm となり、眼から20cmの範囲は裸眼が一番良く見えるのです。-2.50Dの眼なら、100cm÷2.5D=40cm となり、眼から40cmの範囲は裸眼で良く見えるのです。

 
 
 
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【老眼鏡が必要?】-1.00Dの近視がある45歳 と、-3.00Dの近視がある60歳

同じ近視同士でも、弱い近視と強い近視では裸眼で近くが見える距離にも差が生じます。-1.00Dの近視では「100cm÷1.0D=100cm」で、眼前1mまでが裸眼で良く見える眼です。-3.00Dの近視では「100cm÷3.0D=33cm」で、眼前33cmまでが裸眼で良く見えます。
老眼の検査とは裸眼で眼前33cmの所で行います。両者は近用度数が必要か否か?

①「-1.00Dの近視がある45歳では?」
手元で細かい文字を満遍なく読む為に必要な調節力は4Dです。45歳の調節力は「3D」の為、あと1Dが不足。遠方矯正度数が-1.00Dの眼は、裸眼で近くを見た時は1Dの調節力に相当するので合計4Dの調節力を得ている事となり、老眼鏡は不要。

②「-3.00Dの近視がある60歳では?」
手元で細かい文字を満遍なく読む為に必要な調節力は4Dです。60歳の調節力は「1D」の為、あと3Dが不足。遠方矯正度数が-3.00Dの眼は、裸眼で近くを見た時は3Dの調節力に相当するので合計4Dの調節力を得ている事となり、老眼鏡は不要。