■「屈折異常と、その矯正 vol.4」老眼鏡や遠近両用が必要な近視

3つに分かれる裸眼近点の分類

近視の人でも遠用眼鏡だけでなく近用の眼鏡が必要になる場合があり、遠近両用眼鏡をかけている人も多くいます。近視だから「眼鏡を外せば字が読めるから老眼は要らない」と言いますが、正確には老眼の度数が不要な近視と、老眼の度数が必要な近視とに分かれます。裸眼で文字が読める距離が、「①非常に近い」「②ちょうど良い」「③遠い」この3分類のうち、近く用の度数(老眼)が必要なのはの人です。

※稀に「近視だから老眼にならないのでは・・」という話も聞きますが、どんな屈折異常の人でも眼の調節力は衰えますから、老眼になります。眼の調節力とは、近くにピント合わせを行う時に水晶体を膨らませる力です。その力が衰えれば以下のような状態が必ず現れます。

●近視の人が老眼の始まりを知る目安として、遠くが見える眼鏡をかけた状態で、手元の小さい文字が見にくくなってきます。文字を遠ざけると見やすくなります。または、遠用眼鏡を外して裸眼で見るようになります。
●強い眼鏡と弱い眼鏡を持っている場合、弱い眼鏡で小さい文字が見える状態になります。
以上の事は水晶体を膨らませる力(調節力)が充分に備わっていた若い頃には無かった症状です。

 
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①【近視が-5.00D以上の眼】
裸眼視力が0.1以下なので起床後から就寝前まで眼鏡を必要とします。20cm位まで顔を近づけないと裸眼で文字が読めません。強度近視になると10cmまで顔を近付けないと見えません。非常に裸眼の明視距離が近い眼だと言えます。

②【近視が-2.50D ~ -3.50Dの眼】
裸眼視力が0.1 ~ 0.2なので眼鏡は常時かけている人達です。その代わり眼鏡を外すと手元の文字には、眼から30cm ~ 40cmの遠過ぎず・近過ぎずの距離でピントが合います。裸眼の明視距離が手元にちょうど良く合っている眼だと言えます。

③【近視が-2.00D以下の眼】
そこそこ遠くが見えるので眼鏡を持っていない人も居れば、眼鏡を持っていたとしても運転の時だけに使う等で、常時かけていない人が多い近視の分類です。裸眼で手元の文字がはっき見える距離は50cm ~ 100cmで、裸眼の明視距離が遠い眼だと言えます。



 
 

①の人は凹レンズの近用度数を、③の人は凸レンズの近用度数を

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凹レンズの近用とは・・(60歳前後の人を例に)

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このように遠用の度数が強度近視の人は、裸眼の近点距離がとても近いです。適度に離した距離で読めるようにする為には、マイナス度数(凹レンズ)が老眼用の度数になります。近視が強い人は皆この例に当てはまります。遠近両用を作る場合は、遠用のマイナス(凹)度数 + 近用のマイナス(凹)度数での組み合わせになります。
 
 

凸レンズの近用とは・・(60歳前後の人を例に)

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このように遠用の度数が弱い近視の人は、裸眼の近点距離が遠くなります。文字を手元のちょうど良い距離で読めるようにする為には、プラス度数(凸レンズ)が老眼用の度数になります。裸眼視力が0.5 ~ 0.6の弱い近視の人は皆この例に当てはまります。遠近両用を作る場合は、遠用のマイナス(凹)度数 + 近用のプラス(凸)度数での組み合わせになります。



 
 

遠近両用は、遠用度数+加入度


老眼の年齢からは年々、水晶体を厚くして近くにピント合わせを行う調節力が減退します。調節力が衰えると遠く用の眼鏡で手元の文字を見た時に、以前よりもぼやけてしまいます。これを解消するには失われた調節力に相当する凸度数を遠用度数に加えます。これを「加入度数」と言い、遠用度数に加入度数を加えたものが近用度数です。加入度数は、addition(アディション)の頭文字3つを取った用語で「ADD」と表します。
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老眼ではない年齢では調節力が衰えていませんので、遠くが見えるように合わせてある眼鏡のままで近くの文字がぼやける事なく見えます。
 
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老眼の年齢になると調節力が衰えてくるために、遠くに合わせてある眼鏡のままでは、近くの文字が見にくくなってきます。60歳前後では、+2.50Dを遠用度数に加えないと近くが見えません。
 
 
 

強度近視・弱度近視のポイント!(60歳前後の人の遠近両用レンズを例に)

 
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近視が強い人の遠近両用レンズは、遠も近もマイナス(凹)レンズになります。ここでのpointは、上部(遠用部)と下部(近用部)が共に同符号のマイナスレンズ同士になる点にあり、足元の像が浮かないで誰でも慣れやすい事。ある程度高齢になってから遠近両用レンズをスタートしても大丈夫です。
 
 
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近視が弱い人の遠近両用レンズは、遠がマイナス(凹)レンズになり、近がプラス(凸)レンズになります。ここでのpointは、上部(遠用部)と下部(近用部)が違う符合のレンズになるという点にあり、近用が凸レンズになると足元の像が浮きやすく、遠近両用レンズに慣れにくいという事。比較的、老眼が弱いうちに遠近両用をスタートした方がスムーズにかけこなせます。