遠近両用(累進多焦点)レンズについて

 
DSC_0040
 
 
DSC_0040
(Ⅰ)遠近両用レンズ(累進多焦点レンズ)は、遠く用の度数が入っている場所から近く用の度数が入っている場所までの道のりに中間部分があります。ここは遠用度数から近用度数に変化して行く過程の度数が入っている部分で、累進帯(るいしんたい)と呼びます。

(Ⅱ)累進帯が長めのスタンダードタイプと短めのショートタイプがありますが、このサイトでは、世間一般的に多くの人が使っている累進帯が長めのスタンダードタイプの遠近両用レンズについて述べます。


遠近両用レンズを使う場合は、適していないフレームと適したフレームがあります

 

 
DSC_0040
遠近両用レンズは、このように「遠用度数の位置」と「近用度数の位置」を示すマークが付いた状態で眼鏡店に届きます。
 
 
DSC_0040
遠近両用レンズに適応するフレームというのは、画像のように「遠用度数の位置」から「近用度数の位置」までがフレームの中に入る上下幅である事が絶対条件になります。
 
【遠近両用レンズに適していないフレーム】
 
DSC_0040
上下の幅が浅いフレームでは、老眼部分の一部がフレームの外側に出てしまいます。このままレンズを削ってしまうと、老眼部分が切り取られた状態になってしまいます。
 
【遠近両用レンズに適しているフレーム】
 
DSC_0040
このように遠用度数から近用度数までが全てレンズ内に入る上下幅の深いフレームが遠近両用レンズには適しています。


必要最低上下幅についての誤解

 

よく聞く話しに『遠近両用は、フレームの上下幅が最低〇〇mmあれば大丈夫ですよ!』という話しがありますが、誤解が非常に多いので注意が必要です。
フレームというのは枠の中央部分の上下幅がいちばん深く出来ており、「フレームの上下幅が最低〇〇mm」というのはこの部分の幅の事を示しています。
フレームを掛けた時に一番深いこの中央部分に眼(瞳)があれば、「最低〇〇mmあれば大丈夫ですよ!」と言っている上下幅でいいのです。
しかし瞳孔間距離が狭い人は、眼(瞳)の位置が枠の中央よりも必ず内側になってしまいます。こういう場合はもっと上下幅が必要になる事がありますので、枠の上下寸法だけで決めるのはよくありません。フレームデザインが変われば、眼(瞳)の位置の上下幅も変わります。その理由は以下の通りです。
【よく分かる例として、「スクエア型」「ディアドロップ型」を比較します。】
 
DSC_0040
スクエア型と言い、下のリムが水平なデザインのフレームでは、枠の中央に眼(瞳)が位置しても内側に眼が位置しても、枠の上下幅は殆んど変化しませんので、瞳孔間距離が広い人、狭い人問わず遠近両用レンズの近用部分は全てレンズ内に入ります。「最低〇〇mmあれば大丈夫ですよ!」という文言に当てはまります。
 
 
DSC_0040
一方でディアドロップ型と言い、通称ナス型とも言うサングラスのような形のデザインのフレームでは、枠の中央と内側の上下幅が変化します。その為、枠の中央部分に眼(瞳)が位置する瞳孔間距離の広い人では遠近両用レンズの近用部分は全てレンズ内に入りますが、枠の中央部分よりも内側に眼(瞳)が位置する瞳孔間距離の狭い人では、遠近両用レンズの近用部分が欠けてしまう事になります。

遠近両用レンズに適するフレームかどうかは、枠の形状とその枠をかけた時の眼の位置で決まります。いちばん深い上下の寸法だけを測っただけでは適合不適合は分からないのです。


老眼の一部が切り取られてしまう・・そのような時の技術的対処

 

 
DSC_0040
【気に入ったフレーム、老眼の一部が切れてしまう・・】
お客様が気に入ったフレームでは近用部分の一部が切り取られてしまう結果でも、ハーフリムレス(ナイロール)というタイプであれば、次のような対処が可能です。
 
 
DSC_0040
【不足している上下幅は、2.0mm】

近用(老眼)の部分が全てレンズの中に入る為には、上下幅が2.0mm不足しています。レンズが赤線の部分まで必要です。
 
 
DSC_0040
【技術的対処】

不足している2.0mm分を伸長した型板を作り、その型の通りにレンズを研磨します。近用(老眼)の部分が全てレンズの中に納まります。
※オールメタルフレームでは出来ません。下半分に枠がないハーフリムレスや、枠がない縁無しフレームはこの方法が可能です。加工を外注に出している店舗ではこのような事はまず行いません。


遠近両用レンズの特徴

 

遠近両用レンズというのは、老眼が強くなると視野が狭くなるという特徴があります。ルーペでも同じ事が起こります。高倍率のレンズになるとだんだん端の方が見づらくなってきます。目安として、+2.50Dの加入度が必要な年齢(50代半ば)から、特に近用部の視野の広さに違いが現れます。老眼の初期は安価なレンズでも見える範囲が広い・狭いは感じませんが、老眼の中期からはレンズの設計が大きく影響します。出来るだけ見える領域(明視域)が広く設計されたレンズの御使用をおすすめします。

※加入度とは、年齢が上がるに連れて失われてしまった水晶体を厚くする力(調節力)です。簡単に言うと「老眼の度数」です。

年齢別加入度(Addition)
40歳~45歳 +1.00~+1.50
45歳~50歳 +1.50~+2.00
50歳~55歳 +2.00~+2.50
55歳~60歳 +2.50~+3.00
60歳以上 +3.00~
 
DSC_0040
■ +1.50 ⇒ +2.00 ⇒ +2.50というように、年齢に応じて老眼の度数が強まっていくと、見える範囲も狭くなっていきます。(※特に、遠方も近方も凸レンズを使用する遠視の眼は顕著に現れます。)
 
【見える領域(明視域)が広く設計されたレンズとは】
 
DSC_0040
遠近両用レンズ(累進多焦点レンズ)というのは、レンズ両端の斜め下方向に歪む部分が出来てしまいます。ここの歪み部分をいかに減らすかで「遠中近」全体の見え方に違いが出ます。遠近両用レンズは、グレードが高いほど具合が良いです。若い人が使っているレンズよりも、いつも眼鏡をかけていて現役で働いている年配の人が使っているレンズの方が良いレンズである事が多いです。

遠近両用レンズには、「遠・中・近がバランスのとれた設計」「遠方重視の設計」「中間・近方重視の設計」などというものがありますが、私どもでは基本的に「遠・中・近がバランスのとれた設計」のレンズを販売しますので、それに基づく説明になります。

■table

  スタンダード ハイグレード
遠 方 普通 広い
中 間 せまい 広い
近 方 せまい 広い
 
DSC_0040
 
DSC_0040
 
DSC_0040
スタンダードタイプとハイグレードタイプを比較すると、「遠中近」のいずれもハイグレードタイプは端の方までぼやけないで広い視野の設計になっています。