【70代女性】不同視「初めて普通に歩ける眼鏡との出会い」

前編(白内障手術前)

完全矯正値は、あくまでも参考程度に考える
不同視眼とは、左右の視力に大きな差がある眼です。両眼をそれぞれよく見えるように矯正した度数も大きな左右差がある度数となります。その度数のままでは普通に歩ける眼鏡になりませんから、不同視の各眼を矯正した度数というのは、この後に行う両眼視装用の度数を決定するまでの参考程度に留めておくのみです。
 
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【右眼の裸眼と矯正】

裸眼視力が0.2で眼の中に入った光が網膜の手前で焦点を結ぶ近視の焦点。sph-2.50Dのレンズで1.2の視力まで出ます。
 
 
 
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【左眼の裸眼と矯正】

裸眼視力が0.8で眼の中に入った光が網膜の手前と後ろで焦点を結びます。「近視の焦点」+「遠視の焦点」になる眼は雑性乱視と言います。sph+0.25D cyl-1.00D Ax90°のレンズで1.2の視力まで出ます。


持っている具合が悪い眼鏡

【右眼】sph-2.25D(視力1.0)
【左眼】sph+0.25D cyl-0.50D Ax90°(視力1.0)

※左右の差が2.50Dあり、片眼ずつなら普通に歩けますが、両眼にすると歩行が困難となる。


 装用出来ない理由 

完全矯正値から左右とも少々弱めた程度では、使いこなせる眼鏡にはなりません。重要なのは、裸眼視力から何段階アップしたかで決まります。左眼は元々の視力が良いので裸眼視力「0.8」がレンズを合わせて2段階アップの「1.0」になっても何の問題もありません。問題は右眼にあります。

原因はこれです【0.2⇒1.0】
0.2⇒0.30.40.50.60.70.80.91.0
これは8段階アップになります。左右の差がある場合、両眼共に同じ視力に揃えられてしまうと、左右でそれぞれ像の大きさが違って見える為、とても苦痛を伴います。

※眼鏡は、このような左右の差までが理想です。
順応できるレンズの左右差
小児 3.00D~4.00Dも可能
成人 2.00Dまでが原則(個人差あり)
高齢の場合 1.00Dが理想


検眼と眼鏡合わせは左眼から

不同視の場合は、遠くが見やすい方の眼から検査を始める方がスムーズな流れになります。基本的に検眼は何処の眼科でも右眼から始めますが、必ずしも右眼から検査しなければいけないという決まりはありません。こちらのお客様の左眼は、遠視の焦点と近視の焦点がある混合性乱視という眼。裸眼は良い視力を得られていますが、疲れない様にするために度数をしっかり合わせます。こちらの左眼が「遠くを見る」という役割をします。

一方、右眼は近視。近視は近くがとても見やすい眼ですから、普段はこの右眼が「近くを見る」という役割をします。遠くは左眼で、近くを右眼でというように自然とモノビジョン法が成り立っています。


①左眼の度数を決める

【左眼】sph+0.25D cyl-0.75D Ax90° 視力を1.0に決定


②右眼の度数を決める

度 数 視 力 装用感
-2.00D 視力0.9 歩けない
-1.75D 視力0.7 歩きにくい感じがする
-1.25D 視力0.6程度 普通に歩ける


作製眼鏡

【右眼】sph-1.25D 視力0.6

【左眼】sph+0.25D cyl-0.75D Ax90° 視力1.0

※左の度数を最初に決め、右の度数は普通に歩ける度数でやめておく。その後、外でお会いすると、いつも眼鏡をかけているお姿を拝見しています。



 

後編(白内障手術後)

白内障の手術とは、白濁した水晶体を透明な人工の水晶体に取替える事です。と同時に人工水晶体にはそれぞれの度数が設けられており、眼の屈折度数も人為的な設定が可能です。極端に言えば、「手術前は視力が良かった遠視系の眼を、手術後は近視の眼」にする事も可能で、またはその逆も出来ます。ですが一般的には、手術後はこのようにしている場合が多いです。

手術前は強い遠視になっていた。
老化によって強い遠視になってしまった人は、遠視が無かった若い頃の眼に戻しています。
手術前は、強度近視だった。
強度近視の人は、初めて眼鏡を使い始めた学生の頃の弱い近視の眼に戻しています。
手術前は、不同視だった。
左右の視力に大きな差がある不同視は、左右の差が縮まって「不同視」とは言わないレベルの左右差になっています。
遠視系だった眼を近視系にするとか、近視系だった眼を遠視系にするとか、極端な正反対の眼にはせずに患者さんの生活が再びスムーズに戻るよう配慮しているものと思われます。


白内障手術後

【遠方矯正視力】

【右眼】裸眼視力0.3
sph-1.50D×矯正視力1.2

【左眼】
裸眼視力0.8
sph+0.50D×矯正視力1.2

※眼鏡レンズで矯正すると両眼共に良好な視力となりますが、かえってそれでは本人は生活しにくいでしょう。矯正してしまうことで近くが見える右眼の役割を奪ってしまうからです。

【近方矯正視力】
裸眼視力0.6
R)sph+0.50D  

裸眼視力0.1
L)sph+1.50D

 
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手術後は左右の差が2.00Dで右眼は今まで通りの近視。近視なので遠くはぼやけますが近くが見えますから以前同様に右眼が近距離を見る役目をします。

左眼は、ほぼ正視眼で遠くが見える眼。遠くが見える眼なので近くはぼやけます。白内障になる前の混合性乱視(雑性乱視)ではなく、乱視が消滅して単純な弱い遠視だけなのですっきりした見え方になります。

 
 
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不同視眼なので、基本的に老眼鏡は不要です。理由は右眼で手元が見えるから。視力差がある人はそれぞれの役割が違う眼を上手に使いこなしているのです。
※集中して書き物等をする場合のみ老眼鏡を使用します。
 
 
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作成眼鏡
(遠用:度無しサングラス)
【右眼】sph±0.00D  
【左眼】sph±0.00D

(近用:書き物をする場合のみ)
【右眼】sph+0.50D  
【左眼】sph+1.50D

 
【近用度数は、不同視特有の遠用眼鏡を使わない人に対する眼鏡処方】
 
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