乱視軸度が原因の装用不具合 乱視軸度の変化と、軸度が原因となる悪い装用感 【加齢による乱視軸度の変化】 加齢と共に乱視は、直乱視から倒乱視へと変化していく傾向にあり、矯正レンズの乱視軸度も度数を水平の方向に入れる直乱視の矯正から度数を垂直の方向に入れる倒乱視の矯正へと変化していく傾向にあります。若い頃は水平方向だった乱視の軸度が、加齢と共にだんだん垂直方向へ変わるというイメージです。180°だった乱視軸度が90°に変わってしまうという事ではなく、160°や150°になって行く事が多いのです。 イラストで表すとこのように検眼レンズで乱視を矯正する軸度が、180°だったものが段々と上がって行き斜めになって来ます。 30代後半男性の例 平成23年度作製の度数 sph-2.25D cyl-0.75D Ax180° sph-0.75D cyl-0.75D Ax180° 平成27年度作製の度数 sph-1.50D cyl-1.50D Ax10° sph±0.00D cyl-1.50D Ax170° 前回よりもデスクワーク重視に近視(sph)を下げ、乱視数値も増えてきた為、乱視度数(cyl)をアップ。乱視軸度(Ax)も倒乱視化の傾向が出てきました。 【倒乱視化にあてはまらない強度乱視】 30代後半男性の例 平成元年度作製の度数(5歳) sph+2.00D cyl-4.50D Ax180° sph+1.50D cyl-4.50D Ax180° 平成10年度作製の度数(14歳) sph+0.50D cyl-4.50D Ax180° sph+0.50D cyl-4.50D Ax180° 平成13年度作製の度数(18歳) sph-1.50D cyl-4.50D Ax180° sph-3.50D cyl-4.50D Ax180° ※遠視と乱視の初眼鏡は5歳、その後は近視へ移行します。幼い頃からcyl-4.00Dやcyl-5.00Dなどの強度乱視は、年齢を経ても水平方向のままである傾向が見られます。そして、このような人達が白内障の手術をして人工水晶体に代わると、乱視量が半分以下に激減するのを見かけるので、角膜乱視よりも水晶体の乱視が大部分を占めているかと思われます。 乱視軸度の変化による眼鏡装用の不具合(1) 今までの乱視軸度が180°の水平方向で眼鏡を装用してきた患者さんが居たとします。今回の乱視軸度が斜め方向に変化していた場合、遠用の眼鏡処方を完全矯正値の正式な乱視軸度のままで装用テストをすると、足元(地面)が斜めに見える等の悪い装用感を訴えることもあります。 遠用処方だけでなく、近用処方においても「良く見えるんだけれども、本が四角く見えない・・」などの物体の形が実際と違って見える装用感を訴えることもあります。 気を付けるのはこういう時! ●乱視を初めて入れる 今までの眼鏡は乱視を入れていない、今回から乱視を入れないと視力が上がらない眼になった。これは「若年期・中年期・高年期」全ての年代で非常に多いです。屈折度測定装置(オートレフラクトメーター)の値は、乱視の度数だけでなく軸度にも注意しなければなりません。 ●Ax180°でずっと使って来た レンズ交換の時は、今まで使っている眼鏡の乱視軸度までをしっかり見て参考にする必要があります。ずっと水平180°に合わせていた人は、急には斜めの軸度に順応出来ません。 下記に、検眼レンズを使って悪い装用感が発生しやすい乱視軸度を表しました。 ハの字型 軸度がハの字になる例です。地面(床)の中央が高く見え、両端が低く見える時があります。(お山のように) 片眼斜め型 斜め乱視になっている方の眼では、足元が傾斜に見える事があります。また、手元の文字やモニター画面を見ている時に斜め方向からの強い刺激を感じる例もあります。 お山の反対、Vの字です。平らになっている地面(床)の中央が低く見え、両端が高くなって見える時があります。 軸度を水平にすると改善します。 両眼の乱視軸度を「右を10°」水平側に戻したら「左も10°」水平側に戻す。まだ違和感があれば更に各眼10°ずつ水平側に戻す。このようにしていくと装用感が良くなります。ただし、本来の乱視軸度ではなくなる為、視力が若干落ちてしまう事を指摘される場合もあります。遠用処方というのは眼鏡を普通にかけて歩けないと意味がないので、乱視軸度を調整した理由を患者さんに説明すれば皆さん分かっていただけます。 ※白内障手術後の人工水晶体挿入眼では、乱視軸度による違和感の発生を認めない事が殆んどです。屈折度測定装置(オートレフラクトメーター)の乱視軸度が斜めを示していても躊躇しなくて良いでしょう。 乱視軸度の変化による眼鏡装用の不具合(2) (1)の斜め乱視だけでなく、90°に合わせる強い乱視も要注意です。今までAx90°の装用経験が充分にある人へは、躊躇せずに合わせても問題なく順応出来ます。初めてcyl-1.00Dを超える度数を合わせる場合や、左右の差が1.00D以上ある場合に装用の不具合が発生しやすいのです。 気を付けるのはこういう時! ●目安は、cyl-1.00Dを「超える場合」、cyl-1.00Dの「差がある場合」 子供達の遠用処方ではAx180°方向が多く、横方向の乱視というのはしっかり合わせても装用の不具合は発生しずらいものです。さらに順応性が高い年齢層である事も幸いします。乱視矯正で装用不具合が起こりやすいのは、「斜めと縦です。」成人の縦乱視の矯正では「90°の乱視は半分」「差がある場合は弱い方と揃える」このような方法をとると良いでしょう。 ●老眼の度数を強める時 「歳をとってから出現する乱視は、縦乱視」老眼の進行と相乗するのがAx90°の縦乱視です。この乱視は年々増えてくる傾向にありますから、強くなる前に合わせておくと良いです。老眼の処方をする際に、乱視を入れた見え方が良ければ早めの段階かた合わせておいた方がいいでしょう。強くなってしまってから急に合わせると雑誌や端末の形状が変形して見える違和感が出やすいのです。 【右眼】sph-2.00D cyl-1.50D Ax90° 【左眼】sph-2.50D cyl-1.50D Ax90° いきなりcyl-1.50D Ax90°では、階段の段差が高く見えたり、ご自身の背が高くなったような違和感が出ます。 【右眼】sph-2.00D cyl-0.75D Ax90° 【左眼】sph-2.50D cyl-0.75D Ax90° 半分から装用テストをすると良いでしょう。 【右眼】sph-2.00D cyl-1.50D Ax90° 【左眼】sph-2.50D cyl-3.00D Ax90° 意外と多いのが、乱視が強いのに眼鏡をかけていない人です。過去に眼鏡合わせで辛い経験をした事が理由で眼鏡をかけていない人もおります。 乱視の度数に大きな左右差があると、物の高さが右端と左端で違うように見えたりする事があります。近くを見る事が多い若い人では、ノートPC画面の枠の高さが右と左で違って見える事もあります。普段、眼鏡をかけていない人に対して処方する時は要注意です。 【右眼】sph-2.00D cyl-1.50D Ax90° 【左眼】sph-2.50D cyl-1.50D Ax90° 両眼の度数を揃えた方が感覚が良くなります。左眼の視力はダウンするはずですが、そもそも普段から見えるようにして過ごしていない人なら、cyl-1.50Dが入るだけでも充分です。