■「屈折異常と、その矯正 vol.3」乱視

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視力検査表の一番下は、眼の表面の角膜に関係する検査を行う【乱視表】です。乱視は、眼鏡レンズで矯正が出来る「正乱視」と、怪我や事故、円錐角膜が原因で眼鏡レンズでは矯正する事が出来ない「不正乱視」に分かれます。レンズの役目をしているのは角膜と水晶体で、角膜は眼球全体の屈折力60Dのうち、40Dの屈折力を担っています。この角膜に歪みがなく完全な球面の場合は、角膜を通過した光線は眼の中で1つの焦点となり乱視の症状は現れませんが、角膜が球面ではなく、歪みがある場合、歪みというのは縦・横のカーブに違いが生じている場合、角膜を通過した光線は眼の中で2つの焦点が出来ます。焦点が2つ出来る事を乱視と言い、この2つの焦点が原因でブレて見えるのです。
 
 
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近視の場合、弱度~中等度なら8~9割程、強度ならそれ以上の近視の度数を先に合わせて、遠視は目いっぱいに合わせてからこの【乱視表】を見せた時、角膜の縦・横のカーブが均等ではない眼には、同じ太さ・濃さで構成されている放射状の線が同じ太さと濃さに見えず、 濃く強調された線と、薄くはっきりしない線が現れます。


乱視が発生しない角膜とは

 

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乱視が発生しない角膜とは、球の形をした表面の【縦・横の経線】に乱れがない均一のカーブ面である事です。この均一面を光線が通過すると、焦点は「1つ」に結ばれます。正視であれば矯正は不要。近視や遠視であれば、眼軸の長短が関係し、焦点は網膜の前後になってしまうので、網膜上に結像させる為に凹レンズや凸レンズを使います。


乱視が発生する角膜とは

 

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乱視が発生する角膜とは、角膜経線の縦方向と横方向に違いが生じている角膜です。縦方向と横方向の経線に違いが生じている角膜は均一のカーブ面ではなく、屈折が強い経線と屈折が弱い経線になります。縦方向が強く屈折していたり、横方向が強く屈折していると、90°反対の方向は弱い屈折となります。これが角膜に乱視が発生する原因です。

縦方向の経線と横方向の経線のどちらかが強い経線となって、その90°反対側の経線が弱い経線となっている角膜に光線が入ると、眼の中では焦点が一点にならずに焦点は2つになります。一点に焦点が集中せずに焦点が2つになる事で物がダブって見えるのです。


縦カーブの屈折が強い直乱視(ちょくらんし)

 

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【乱視表の見え方】
近視や遠視の度数をある程度合わせた後に乱視の検査を行います。縦カーブの屈折が強い角膜の人が乱視表を見ると、12番前後~6番前後の垂直方向の線が強くはっきりとした見え方になります。その90°反対の9番前後~3番前後の水平方向が薄くてはっきりしない見え方になります。
 
 
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【直乱視の角膜】
直乱視の角膜は上下に強く押しつぶされた様な楕円形です。角膜の強い屈折である垂直方向の経線を「強主経線」と言い、その90°反対側の水平方向が弱い屈折の経線となるので、これを「弱主経線」と言います。
 
 
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【矯正するレンズと、その方向】
乱視度数の強さを表す数値をシリンダー(cyl)と言います。「CYL」はCylindrical(円柱形)の略で、頭3文字だけとって「CYL」。 乱視のレンズには矯正方向があり、AXIS(軸)が示されます。多くは頭2文字だけとって「Ax」と書きます。漢字で記載された処方箋では、CYLは円柱鏡(えんちゅうきょう)と書かれ、AXISは円柱軸(えんちゅうじく)と書きます。いずれも乱視の強さと矯正方向です。

Ax180°前後の直乱視は若年層に多い乱視です。例として「-1.00D」の乱視が必要で、縦方向の屈折が強い直乱視ならば、「cyl-1.00D Ax180°」これを角膜の弱主経線方向に入れます。乱視表では薄くてはっきりしていない180°の方向です。乱視が強くても、水平方向の乱視というのは目いっぱいに合わせても違和感なく眼鏡装用が可能である事が多いです。


横カーブが強い倒乱視(とうらんし)

 

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【乱視表の見え方】
近視や遠視の度数をある程度合わせた後に乱視の検査を行います。横カーブの屈折が強い角膜の人が乱視表を見ると、9番前後~3番前後の水平方向の線が強くはっきりとした見え方になります。その90°反対の12番前後~6番前後の垂直方向が薄くてはっきりしない見え方になります。
 
 
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【倒乱視の角膜】
倒乱視の角膜は水平方向が強く押され、楕円形を立てた様な形です。角膜の強い屈折である水平方向の経線を「強主経線」と言い、その90°反対側の垂直方向が弱い屈折の経線となるので、これを「弱主経線」と言います。
 
 
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【矯正するレンズにも方向があります】
乱視度数の強さを表す数値をシリンダー(cyl)と言います。「CYL」はCylindrical(円柱形)の略で、頭3文字だけとって「CYL」。 乱視のレンズには矯正方向があり、AXIS(軸)が示されます。多くは頭2文字だけとって「Ax」と書きます。漢字で記載された処方箋では、CYLは円柱鏡(えんちゅうきょう)と書かれ、AXISは円柱軸(えんちゅうじく)と書きます。いずれも乱視の強さと矯正方向です。

Ax90°前後の倒乱視は老眼が始まってから多くなる乱視です。例として「-1.00D」の乱視が必要で、横方向の屈折が強い倒乱視ならば、「cyl-1.00D Ax90°」これを角膜の弱主経線方向に入れます。乱視表では薄くてはっきりしていない90°の方向です。乱視が強い場合、垂直方向の乱視というのは目いっぱいに合わせた度数を装用すると、御自身の背が高くなったように感じたり、床の高さが実際と違うように見えたり、違和感が出る事が多いです。


斜めの乱視

 

直乱視や倒乱視の他、斜めの乱視「斜乱視(しゃらんし)」というのもあります。45°方向や135°方向が強い屈折となっている角膜です。水平方向が強く押された倒乱視の角膜を右斜め、左斜めに寝かせた形が斜乱視です。弱主経線が45°前後、135°前後なので矯正する為には度数を斜め方向に入れます。
 
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■直乱視や倒乱視のように乱視の度数が「垂直」「水平」の方向に入るのではなく「斜め」に入るので、若年時から斜乱視の眼鏡をかけている人は問題なく順応出来ますが、成人以降は順応が難しくなります。弱い乱視であれば省いてしまっても、近視や遠視の度数だけで良好な視力となるので不都合にはなりませんが、乱視が強くて省く事が出来ない人もおります。斜乱視を合わせる必要がある時は、実際の斜め軸度ではなく、装用可能な軸度に修正して眼鏡処方を行う必要があります。そして、「片眼が斜乱視」「片眼は直乱視」または「倒乱視」というような事も多々あります。乱視矯正が必要な眼、乱視矯正が不要でも問題がない眼を見極めなければなりません。