子供の眼

乳幼児期の遠視から、就学時頃からの眼

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生まれた時の眼球はとても小さい為、網膜よりもだいぶ後ろで焦点を結ぶ強い「遠視」の状態です。体の成長と共に眼球も大きくなるので、網膜よりもだいぶ後ろにあった焦点は網膜上に近付いてきます。遠視が軽減してくるので視力も上がって来て就学を迎える頃に「正視」となり、この頃には大人と同じ1.2の裸眼視力と大人と同じ大きさの眼球になっているのが通常例です。

遠視というのは視力を矯正した際に凸レンズ(+プラスの符号)を必要とする眼。正視は遠視でも近視でもない眼。正視の時期を過ぎてゲーム端末などの近くばかりを見る生活(環境的な要因)と、ご両親から受け継がれる遺伝的要因で、裸眼視力が悪くなって視力矯正をした際に凹レンズ(-マイナスの符号)を必要とした場合は「近視」となります。ご両親が共に強度の近視であると、近視の眼鏡をかける時期が一般に3年生頃なのに対し、就学前の早い段階で近視矯正用の眼鏡をかける事もあります。


視力が良いから正視ではありません。

正視というのは視力矯正(検眼)において、遠視の凸レンズも必要なく、近視の凹レンズも必要なく「±0.00の度無しレンズ装用状態」で視力が1.2出た事です。裸眼視力が1.2あるから正視ではありません。
 
【正視のようで、遠視に注意!】

裸眼視力は1.2ですが、「矯正度数+1.50D装用状態で、矯正視力1.2」というような子もたくさん居ます。この場合は正視ではなく遠視です。軽度の遠視なので弱視になる心配は無く、普段過ごしていて特に問題なければそのままで良いですが、「近くを見ていると頭が痛くなる」との訴えがある場合、遠視矯正用の眼鏡処方を行う事があります。その理由は以下の通りです。

◆遠視の子の裸眼視力測定時は調節力が強く関与します。強度の遠視は調節力を用いても良い視力には出来ませんが、弱い遠視ならば調節力を用いて視力1.2になっている事がありますから裸眼視力があまり当てになりません。眼が疲れている時と、そうでない時とでは視力が違う事もあります。このような場合は遠視の潜伏を疑う事が専門的な見解です。遠視の眼は、常にこの調節を繰り返す為に非常に眼が疲れやすくなります。特に近方作業時は最も多くの調節力を要するので、それが原因で体の不調を訴える事もあります。眼鏡の目的は調節力を出来るだけ使わせないで常に遠くも近くも見ていられるようにする事です。近視のように見えない時だけ使う眼鏡ではありません。

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子供は、雲霧(うんむ)検眼法を行う

調節力というのは、本来は網膜よりも後ろにピントがあるのに、水晶体を厚く調節して網膜上にピントを合わせてしまう力です。子供はこの力がとても強いので、遠視を疑う場合は
視力を出す為の検眼ではなく、調節力を使わせないで本来の屈折度数を検出する為の検眼
が必要なのです。これを雲霧検眼法と言い、遠視を疑う場合だけでなく調節力が強い年齢の眼に有効な検査方法なのです。

※常に強い調節力を使っている事が原因で眼が疲労している状態では、いつもよりも視力が悪くなっており、屈折検査機器が「近視」というデータ結果を示す事が多々あります。調節緊張と言い、水晶体を厚くする調節作用に携わる毛様体筋が疲労していて、遠くを見ても水晶体が厚くなったままで、元の薄い姿に戻りにくくなっている状態なのです。このような時に眼鏡を作ろうとすると度数を誤ってしまいます。

実際にあった例として、誤ったデータ結果の通りに眼鏡を作ってしまった眼鏡店の眼鏡をかけており、「見え具合が悪い・・」という事で眼科に来院した子供さんがおりました。精密に検査した結果、遠視なのに近視の眼鏡をかけていたのです。

 
【雲霧(うんむ)検眼法】
 
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(Ⅰ)視力検査表の一番上の0.1がやっと見える程度になるよう、視力の良い眼に+3.00Dや+3.50Dの強い凸レンズを装用します。
 
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(Ⅲ)裸眼視力1.2の人が、【+2.50D装用で0.5】⇒【+1.50D装用で0.8】⇒【+1.00D装用で1.2】となった場合は、矯正度数+1.00D装用状態で裸眼視力と同じ1.2の視力が得られているので、この+1.00Dの眼鏡を常時かけると遠くも近くも見えて、近くを見た時に起こる強い調節も抑えられますので眼の疲労の抑制に有効です。手元の小さな文字も長時間に渡って楽に見る事が出来ます。これが雲霧(うんむ)検眼法による眼鏡処方です。



 
 

 
 
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近視

正視や遠視で述べた調節力というのは、水晶体を厚くして光の屈折を強めて網膜の後ろにある焦点を網膜上に移動させる為の作用ですから、網膜の前に焦点がある「近視」は調節力を必要としません。「近視は遠くが見えない、近くが見える」と言われるのは、近距離を見る時に眼の中のピントは網膜に近付くからです。近視は調節力を必要とせずに近くが見えるので、細かい作業を行っても眼が疲労しにくいという利点があります。
 
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正視の時期を過ぎてから黒板の字が見づらくなる頃は、眼軸(がんじく)と呼ばれる眼の奥行きが伸びて網膜よりも手前にピントが結ばれる状態になります。この構図が基本的な近視の眼球です。
 
 
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近視は、眼の中で水晶体調節力に関わる”チン氏帯(ちんしたい)”毛様体筋(もうようたいきん)”を働かせる事なく近距離を見る事が可能です。眼精疲労と言うのは、遠くではなく近くを見ている時に発生します。「水晶体・チン氏帯・毛様体筋」これらが網膜より後ろにずれる焦点を網膜上に合わせ続けるからです。この動作がない近視はとても近見視に優れている眼だと言えます。
 
 
近視の注意点1.◆裸眼視力が落ちてくると眼を細めて遠くを見るピンホール効果
 
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視力が確実に悪くなっているサインとして、眼を細めるピンホール効果という現象を無意識に利用するようになります。眼鏡をかけていなくても、眼鏡をかけていても、近視が進行してしまって遠くが以前よりも見えなくなると眼を細めるようになります。これは、眼を細めて網膜に入ってくる光量を減らして一点に鮮明な像を結ぼうとするのです。そうすると視力が向上するからです。

しかし、この状態で得た視力は正確な視力ではありません。これを続けていると眼鏡を使い始める適切なタイミング、または眼鏡の度数交換の適切なタイミングを逃す事に繋がります。また、眼を細めても見づらくなってからのレンズ交換は、今の度数よりも相当強い度数にしなければならず、弱い度数でしか眼が順応出来ずに良く見える眼鏡がかけられないようになってしまうのです。

 
近視の注意点2.◆眼鏡の度数が強いと近視の進行を呼ぶ「調節Lag(ラグ)」、昔から「近視の眼鏡は弱めに!」と言う訳。
 
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網膜にピッタリと焦点を合わせる矯正を完全矯正と言い、最も視力が出る度数で合わせています。この時、眼の中の焦点は正視と同じ「網膜上」です。このまま近くを見ていると、網膜の後ろへ焦点が移動して遠視と同じ焦点「網膜の後ろ」になります。
 
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次に、ぼやけないように水晶体が厚くなって網膜上に焦点を合わせる為の「調節」が起こります。調節と無関係の近視でも、眼鏡の合わせ方次第では調節が起こるのです。裸眼で近くが見える眼に対して、遠用度数が付いた眼鏡で近くを見る以上、どうしても調節が起こるのは避けされませんが、その時に完全矯正と低矯正のレンズとでは、調節に関わる箇所(水晶体・チン氏帯・毛様体筋)の働き方に違いが出ます。弱い度数で近くを見る方がソフトな見え方になって眼が疲れないのです。
 
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近視の進行原因として、調節のラグが挙げられます。ピント合わせ調節の際に網膜上に合わせ切れない部分が出来て、それを眼軸が伸びて合わせようとする結果、眼球が伸びて近視が進行する形となります。子供の近視抑制効果が大きい傾向として「度数が軽度な程、効果が大きい。」と言われます。昔から、近視は眼鏡を「弱めに!」と言うのと同じ意味で、弱い眼鏡の方が

近距離を見ている時に網膜後方への焦点のずれが強い眼鏡のようにはならず、調節のラグが起こりにくい状態になっており、眼軸の伸長が抑えられて近視の進行抑制効果があるからです。

◆point!
調節の発動は近くを見る時に起こりますから、その作用に応じて遠方は強い度数で近方が弱い度数になっていれば、調節ラグも起こりにくい状態になります。「遠」と「近」が違う度数になっていて、「遠くを見る部分が強い度数」、「近くを見る部分は弱い度数」になっているレンズであれば、低矯正の眼鏡で近くを見ているのと同じ事になりますから、近視の抑制効果も同じです。そのような近視用の眼鏡レンズがあるのです。



 
 

マイオキッズレンズについて

◆眼鏡を時々しか使わない人よりも、裸眼視力が0.1前後の常に眼鏡をかけっぱなしの人の方が適します。
 
レンズの構造は、多焦点
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一般の眼鏡レンズは「単焦点」です。-5.00Dならレンズ全体が-5.00Dです。遠くが見える度数で手元を見ていると、焦点(ピント)が網膜より後ろへ行き、水晶体を厚くさせて網膜上に焦点を合わせる働きが起こります。調節ラグが起こりやすい状態です。
 
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ZEISS(ツアイス)マイオキッズレンズは、多焦点です。手元を見る部分が遠くの度数よりも弱く出来ていて、調節ラグが起こりにくい状態になっています。
 
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【右眼】sph-6.25D(近視) cyl-0.75D(乱視) Ax0°=180°(乱視軸度)
ADD+1.50(加入度)

【左眼】sph-5.50D(近視) cyl-0.50D(乱視) Ax0°=180°(乱視軸度)
ADD+1.50(加入度)

 
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レンズの中は、このようになっています。