正視や遠視で述べた調節力というのは、水晶体を厚くして光の屈折を強めて網膜の後ろにある焦点を網膜上に移動させる為の作用ですから、網膜の前に焦点がある「近視」は調節力を必要としません。「近視は遠くが見えない、近くが見える」と言われるのは、近距離を見る時に眼の中のピントは網膜に近付くからです。近視は調節力を必要とせずに近くが見えるので、細かい作業を行っても眼が疲労しにくいという利点があります。
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正視の時期を過ぎてから黒板の字が見づらくなる頃は、眼軸(がんじく)と呼ばれる眼の奥行きが伸びて網膜よりも手前にピントが結ばれる状態になります。この構図が基本的な近視の眼球です。
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近視は、眼の中で水晶体調節力に関わる”チン氏帯(ちんしたい)”毛様体筋(もうようたいきん)”を働かせる事なく近距離を見る事が可能です。眼精疲労と言うのは、遠くではなく近くを見ている時に発生します。「水晶体・チン氏帯・毛様体筋」これらが網膜より後ろにずれる焦点を網膜上に合わせ続けるからです。この動作がない近視はとても近見視に優れている眼だと言えます。
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近視の注意点1.◆裸眼視力が落ちてくると眼を細めて遠くを見るピンホール効果 |
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視力が確実に悪くなっているサインとして、眼を細めるピンホール効果という現象を無意識に利用するようになります。眼鏡をかけていなくても、眼鏡をかけていても、近視が進行してしまって遠くが以前よりも見えなくなると眼を細めるようになります。これは、眼を細めて網膜に入ってくる光量を減らして一点に鮮明な像を結ぼうとするのです。そうすると視力が向上するからです。
しかし、この状態で得た視力は正確な視力ではありません。これを続けていると眼鏡を使い始める適切なタイミング、または眼鏡の度数交換の適切なタイミングを逃す事に繋がります。また、眼を細めても見づらくなってからのレンズ交換は、今の度数よりも相当強い度数にしなければならず、弱い度数でしか眼が順応出来ずに良く見える眼鏡がかけられないようになってしまうのです。
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近視の注意点2.◆眼鏡の度数が強いと近視の進行を呼ぶ「調節Lag(ラグ)」、昔から「近視の眼鏡は弱めに!」と言う訳。
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網膜にピッタリと焦点を合わせる矯正を完全矯正と言い、最も視力が出る度数で合わせています。この時、眼の中の焦点は正視と同じ「網膜上」です。このまま近くを見ていると、網膜の後ろへ焦点が移動して遠視と同じ焦点「網膜の後ろ」になります。
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次に、ぼやけないように水晶体が厚くなって網膜上に焦点を合わせる為の「調節」が起こります。調節と無関係の近視でも、眼鏡の合わせ方次第では調節が起こるのです。裸眼で近くが見える眼に対して、遠用度数が付いた眼鏡で近くを見る以上、どうしても調節が起こるのは避けされませんが、その時に完全矯正と低矯正のレンズとでは、調節に関わる箇所(水晶体・チン氏帯・毛様体筋)の働き方に違いが出ます。弱い度数で近くを見る方がソフトな見え方になって眼が疲れないのです。
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近視の進行原因として、調節のラグが挙げられます。ピント合わせ調節の際に網膜上に合わせ切れない部分が出来て、それを眼軸が伸びて合わせようとする結果、眼球が伸びて近視が進行する形となります。子供の近視抑制効果が大きい傾向として「度数が軽度な程、効果が大きい。」と言われます。昔から、近視は眼鏡を「弱めに!」と言うのと同じ意味で、弱い眼鏡の方が
近距離を見ている時に網膜後方への焦点のずれが強い眼鏡のようにはならず、調節のラグが起こりにくい状態になっており、眼軸の伸長が抑えられて近視の進行抑制効果があるからです。
◆point!
調節の発動は近くを見る時に起こりますから、その作用に応じて遠方は強い度数で近方が弱い度数になっていれば、調節ラグも起こりにくい状態になります。「遠」と「近」が違う度数になっていて、「遠くを見る部分が強い度数」、「近くを見る部分は弱い度数」になっているレンズであれば、低矯正の眼鏡で近くを見ているのと同じ事になりますから、近視の抑制効果も同じです。そのような近視用の眼鏡レンズがあるのです。
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